【インブリード(英名:inbreed)】
血統表で5代前までに同一の祖先を持っているような配合のこと。近親交配ともいう。
サラブレッドの場合は好んで近親配合を行なう場合が多く、表記する場合は「○○(馬名)の3×4」と表す。
数字は世代数を示し、「ナスルーラの3×4」といえば3代目と4代目にナスルーラが入っているという意味で
あり、「○○(馬名)の5×5×5」といえば、5代目に3回入っていることを示す。共通祖先の望ましい形質を
固定させることを目的としているが、逆に隠れていた不良形質が現れる危険性も高くなる。
日本では競走馬や肉牛(特に繁殖牛)の生産や選別・血統を語る際において使用されるのが主で、畜産分野
競馬産業から持ち込まれた用語といえるが競馬シミュレーションゲーム「ダービースタリオン」シリーズ
の大ヒットによりこの言葉が広く知られた経緯もある。他方、純血種の犬や猫の生産に関わるペット業界
では、生産効率の向上や小型化などを意図した一部の生産者により、インブリードを意図的かつ過剰に
発生させるケースが近年相次いでいる。この結果として奇形や感覚障害といった先天的な問題を抱える
ペットが少なからず生産され、テレビ番組でも取り上げられるなど大きな問題に発展している。しかし
インブリードは品種改良や品種のスタンダード維持の重要な手段である為、これについて血統登録など
での規制等を行う事も極めて困難でもあるという一面も持っている。
【
日本の馬産におけるインブリード】
日本の馬産におけるインブリードは、血統というものがサラブレッドにとって極めて重要なものであると認識
された頃から生産者に意識され、その実験的な試みが行われている。歴代顕彰馬の中で最も生まれが早い
クモハタも「ハンプトンの5×5」と「セントサイモンの5×5」を持っている。生産者以外でも意識され始めた
きっかけは「トキノミノル」が10戦全勝で日本ダービーを制した事で、血統にあったザテトラークの「3×4」
という配合が、名馬が多く誕生する「奇跡の血量18.75%」としてスポーツ新聞などで持て囃される様になった
事によるとされる。なお「3×4」「18.75%」という血量の根拠については諸説あり、現在に至るまで有力な決め
手になる物が無いが、一説ではトキノミノル亡き後に同年の菊花賞を制したトラックオーが「ブカンの3×4」と
いうインブリードを持っていた事により、日本では定説になったという説がある。この「奇跡の血量」を持つ
日本の競走馬は、「コダマ(ブランドフォードの4×3)」「トウショウボーイ(ハイペリオンの3×4)」などがいる
(ちなみにこのハイペリオン自身も「セントサイモンの3×4」を持つ事で知られる)。現在状況として1980年代
にノーザンテースト、マルゼンスキーが大成功した事もあり、2頭の共通の祖先であるノーザンダンサーの血
を引く繁殖馬が多く、1990年代を中心にノーザンダンサーの「奇跡の血量」を持たせる交配が多く試された。
一方、1990年代後半からは日本馬産史上最大の成功種牡馬とも言われるサンデーサイレンスから広がった
血統を持つ種牡馬・繁殖牝馬が日本の馬産史上無い速度で広まり、近い将来にサンデーサイレンスの血統と
そのインブリードを持つ馬で飽和状態となり、やがて「日本版セントサイモンの悲劇」の様な事態が起きるので
はないかという懸念もある。だがセントサイモンの時代と現在の生産・流通事情は異なる為、同様の状況
に至る可能性は低い。
【
類義語・対義語・関連語リンク】
⇔
アウトブリード(英名:outbreed)
【競馬用語:五十音別一覧】
【-PR-】
- 関連記事
-